福祉などで地域貢献 コミュニティービジネス
利益よりやりがい魅力
福祉サービスや商店街の活性化など、地域に役立つことを目的とした事業「コミュニティービジネス」が注目されている。利益は「そこそこ」だが、地域社会に貢献できる「やりがい」が魅力のようだ。長引く不況で失業率が 5% に達する中、雇用の受け皿としても注目されてきた。
( 鈴木章功、高松秀明)
「まいど、ありがとうね」。東京・ 足立区 の東和銀座商店街。生きのいいサンマやアジが並ぶ店先に、丁寧で温かみのある声が響く。声の主、店長の小林完二さん (42) は、この鮮魚店を営む「アモール・トーワ」という株式会社の社員。同商店街振興組合 ( 田中武夫理事長 ) の有志が一九九〇年に設立し、空き店舗が目立ち出した商店街を中心に地域全体の活性化につながるビジネスを目指す。
近くにある東部地域病院内のレストランと売店の受託を手始めに、現在は、地元の大型スーパーの清掃、学校給食作り、高齢者向けの給食宅配サービスなど六つの事業を手がける。現在はパートも含め、三十代から六十代まで約百五十人が働く。八割は地元の主婦など女性。元商店主もいる。「商店街が元気になれば地域社会が活性化する。もうけではなく、地元住民に役立つ事業をやっていきたい」と田中理事長は話す。
自宅の近くで安心して働け、地域にも貢献できるという点はコミュニティービジネスの強み。失業率 5% 時代に入り、こうした事業が女性や中高年の雇用の受け皿になるのではと、期待も広がる。
政府の産業構造改革・雇用対策本部は今年六月末、介護やまちづくりを担う NPO( 民間非営利団体 ) を「新たな経済主体」と位置づけ、活動の環境整備を図ることを決めた。
自治体が後押し
地方自治体でも、育成に力を入れ始めた。阪神大震災で多くの人が職場を失った兵庫県は、九九年からコミュニティービジネスの立ち上げ費用として一件当たり四百万円の助成を開始。岩手県は今年、 NPO や商工団体とともに「コミュニティビジネス協議会」を作り、山形県も「起業家塾」などの事業を始めた。
民間レベルでもさまざまな動きがある。 NPO サポートセンター ( 東京 ) と江戸川大学 ( 千葉県流山市 ) 、生活協同組合エル ( 同 船橋市 ) で作る「常磐線 NPO プラットフォーム」では、公開講座などで起業の仕方や資金の作り方などを教えている。
新たな雇用の場に
同センターの山岸秀雄理事長は「適正利益でよしとするコミュニティービジネスは、採算面から企業が手を出さなかった分野で行われている。社会的に意義がある事業なのに、取り組む団体の基盤はまだまだ弱く、事業が拡大しなければ新しい雇用にはつながらない。財政面や起業のノウハウも含め、ビジネスを軌道に乗せるための社会的な投資も必要だ」と話している。
コミュニティービジネス
厳密な定義はないが、昨年の国民生活白書では、兵庫県の研究を引用し「地域社会の二一ズを満たす有償方式の事業。(自己の)利益の最大化ではなく、地域の利益の増大を目的とする」と紹介。
利益を第一の目的とはせず、地域の問題を解決したり、生活の質を上げるためのビジネス活動だといえる。株式会社や有限会社など形式はさまさま。
介護保険制度のスタートで、介護・福祉に取り組む NPO が増え、社会的な評価を得てきたことからも、「市民起業」として注目されている。』
(2001.9.26.読売新聞)